お金の思い出
父親が事業に失敗して、それまでは人並み以上の生活をしていたであろう家庭に借金取りが押しかけてくる・・・。生活が一変し金銭的に苦しい生活が始まるが、くさることなく漫画家になりたいという夢を実現していく石坂さんの「積極性」、「タフさ」、「明るさ」には敬服する。ビンボー生活の苦闘をさらりとユーモラスに書いているところがすばらしい。
好き好んでのことではないにしろ、こうした体験を持つ人からすると、現在の日本の不況などは大したことないに違いない。本書を一読して、貧しさは人の心を歪めるという側面があるが、一方では人間を磨き上げる「砥石」のような役割を果たすこともあるのではないか、という気がした。
なお、この本の主人公は石坂さん自身であるが、ところどころで出没する2人の姉妹、両親もなかなかの人達である。「恐るべし、石坂3姉妹、石坂一族」。とにかく、しおれかかった心と体を「元気」にさせてくれる本である。
アイ’ムホーム 遥かなる家路 DVD-BOX
NHKの夜ドラシリーズの中でも秀逸の作品です。放送は見ましたが、DVDが出るのをずっと待ってました。嬉しいです! ストーリーはもちろん、役者陣の演技が光ってます。ストーリーの展開が早く、最後まで飽きさせません。前半は笑いで、後半はシリアス。そのバランスがまた最高。一件の価値ありです。
赤ちゃんが来た (朝日文庫)
11月に予定されていた子供の出産に向けて勉強をしたいと考えて読んでみた。子育てシロウトの父親にとっても面白く、楽しめながら育児を学べる良書だと思う。時代が若干古く、漫画家という一般的ではない職業の方の生活なので、自分のような個性のない普通の家庭にはなじまない面があるが、育児グッズの分かりやすいイラストの説明や本音で言いにくい育児や性についても事柄をズバッと言い切る文章には非常に説得力があり、本書の大きな魅力だと思う。本格的な育児書ではとっつきにくいと考えている私のような新人パパにお勧めです。実際に分娩に立ち会って、本書で書かれている内容が本当だったことを知りました。
学校から言論の自由がなくなる―ある都立高校長の「反乱」 (岩波ブックレット)
現役の東京都立高校の校長先生が、石原慎太郎下の東京都教育委員会の集合知弾圧/大声での脅迫に、静かな表現で異議を申し立てています。当然、不法な嫌がらせや暴力が振ってかかるでしょうから、彼やその支援者(その高校の多くの生徒/保護者など)の勇気には、最大の賛辞をお送りします。もちろん、岩波書店にも!
薄いブックレットですが、小生に印象に残った点は以下のとおり。
・東京都教育委員の米長邦雄氏(将棋指し)は、2004年の園遊会で天皇に「学校で国旗を掲げ、国家を斉唱させることが私の仕事でございます」と言ったところ、天皇は「強制でないことが望ましいですね」と答えた。
・06年9月、東京地裁は東京都教育委員会の「国歌斉唱の際、教職員は国旗に向かって起立しなければならない」等とした「10.23通達」を「思想・良心の自由を保証した憲法に違反する」という判決を下し、「教職員は、国旗に向かって起立し、国歌斉唱する義務はない」とした。
・制度上日本は選挙で首長や議員を選ぶ。教育の現場に自由や活気を許さないのは都民/国民の落ち度。
戦前も選挙制はあった訳ですが、戦後は国民主権となってます。もちろん、市民革命を1度も成功させていない、ムラ社会/大勢順応主義の「私」社会:日本の風土が作った制度ではないので、本音と建前がかけ離れています。ただし、変化が激しく、創意工夫や対話で新しいソリューションを生み出していくことが正統と思われる現代において、教育も当局に都合の良い奴隷を生み出すのが主目的のままでは、日本の風土を支配する神様以外は誰も幸せになれない社会が続いてしまいます。
これは文科省や教育委員会の責任ではなく、国民の責任です。今の日本の普通の学校に子供達を通わせて、しかも改善を考えていないサルのような親達に、“Yes, We Can!"という人間らしいマインドを理解して貰うにはどうしたらいいのでしょうか?