地獄のアリス 1 (愛蔵版コミックス)
IKKIコミックで「フリージア」を連載していた頃からこの作者の作品を愛読している者です
今回の地獄のアリスですが、スーパージャンプという比較的コンビニなど見受けられやすい雑誌に掲載されているためか、フリージアの頃よりも少し一般的になった感じですね
シュウとイライザが「ドヴァシ」って殴られるシーンにはギャグ要素を感じました
優しい松本次郎ですね
この作品が好きならフリージアはもっと面白いです
ちょっと難解ですけど、フリージアの方が予定調和がなくて、かなり狂気的作品です
個人的に
フリージア>地獄のアリス
ですね(○'ω`○)
革命家の午後 (Fx COMICS)
表題作を含め、全5編からなる短編集。
傑作「未開の惑星」に相通ずるテーマを感じさせる。
描写も「ウェンディ」なんかに比べると、比較的丁寧に描かれている気がする。
装丁は、なんだか共産的ハードボイルドな仕上がり。
松本次郎ファンなら、押さえるべし。
女子攻兵 2 (バンチコミックス)
巨大な女子高生の姿をした通常の攻撃が一切無効となる次元兵器・女子攻兵は、搭乗時間限界を過ぎると精神汚染により操縦者は異常を来たす危険が有った…。
兵器のデザインからコメディタッチの萌え風戦闘マンガと思いきや、混沌とした狂気じみた雰囲気が漂い、まるでバッドトリップ時の幻覚を見ているかの如き異形の作品です。
地球の正規軍と独立を目指す異次元移民軍の戦いを描いた本作、女子攻兵を駆る兵士達はただ戦争で死ぬだけではなく、どれだけ精神的に陵辱破壊されてから死ぬか、と言う極限の不条理な設定は、昨今の少女(の様な物)を戦わせる悲劇的な漫画の中でも際立って異彩を放っています。
それでも松本氏の描く女子攻兵のキャラクターデザイン、荒っぽくもポップなペンタッチと殺伐とした描写の合間に漂う奇妙なユーモアが本作をかろうじてエンターテイメントの粋に留めています。
混乱を極めた戦場&戦闘シーン、敵軍の異形女子攻兵、サナトリウム地区の描写に見られる書割の如きシュールなイメージは氏の独壇場です。
何故か全裸で目隠しをし、ロケットを仕込んだ射出刀を操る近接戦のエキスパート:イナミ軍曹等や、幼児型の女子攻兵に乗り、軍人精神の訓示を述べながら時々幼児言葉になるグレフェンベルク大佐等の切れたキャラクターが続出します。
逆に可愛い形の女子攻兵達があまりにも凄惨に破壊され、時に脱糞までする様子は相当悪趣味とも言えますが…。
作品世界の全てが超越的なコンピューター「預元者」の創り上げた壮絶な悪ふざけに思え、上層部すら原理も解らぬ超兵器を操縦しながら常に己が正気を問いている主人公タキガワの今後共々非常にスリリングな漫画です。
万人にはお薦め出来かねますが、松本次郎氏ファンの方、漫画表現の極北をご覧になりたい方には推薦です。
地獄のアリス 2 (愛蔵版コミックス)
世界最終戦争後のような世界。超一流の狙撃手だが、私生活は悲しいほど情けない主人公。すでに家族を失って久しく、マンガ・オタクで、近接戦で役立たず、幼少期から虐待され、生きるために人殺しもいとわず、友達はいない。そんな悲惨な生い立ちに悲壮感は微塵もなく、タフに見えながら、情緒不安定さはその辺の子供とかわらない。その歪みが魅力を醸し出している。
地獄のアリス 3 (愛蔵版コミックス)
荒々しいペンタッチながら非常に達者な絵で戦争・拷問そして屍姦と言う究極の暴力を描きながらどこかクールなユーモアを漂わせる凄みの有る作風です。
アクション・シーンの切れ、可愛い女性キャラクターデザイン共に素晴らしいのですが、どこか心の底からは熱くなれない、女性との性交渉のシーンでも絶頂に達しきれない空虚さが漂って居ます。
読者にもまるで主人公シュウと同様にスコープ越しに世界を見ている様な感覚を抱かせますが、それが病み付きになると堪りません。
但し、他の松本作品に比べると病んだ天才を主人公としながら、シュウは無邪気さが残る少年なので、感情移入し易くなっています。
前半は2巻で描かれたコミューン同志の苦い戦後処理と、タイトル・ロールながら現状全く機能していない女性型性奉仕用アンドロイド「アリス」に秘められた重要な情報、政治力と夢が有る若き指導者ケンジが目指す物が描かれています。
後半は過去に遡って存命中の父に虐待を受けながら徐々に狙撃手としての才能を開化させて行くシュウの様子を描いています。
同時にシュウのかつて持った事の無い暖かい母性や家族に対して生まれたほのかな慕情が、あまりにも残酷に摘まれていく様子が描かれており、次の巻が気になりつつも可哀想でなりません。
表紙の人物が誰であるかは本編を読んでのお楽しみです。
初版本は松本氏の新潮社バンチコミックス「女子攻兵」2巻とのコラボレーション・栞がオマケでした。