ピュアフル・アンソロジー もうひとつの夏休み。 (ピュアフル文庫)
確かにそれぞれ夏休みを題材にした作品だが、とりわけ夏休みを感じられるような作品と言うわけではなかった。
ただ、個々の作品はどれも素晴らしい。
青春デンデケデケデケ (河出文庫―BUNGEI Collection)
60年代の四国を舞台に、ロックに目覚めた中学生のバンド物語。登場人物がロックとは程遠い、田舎の純朴な青年というところが、非常に親近感を持て、感情移入してしまう。ベンチャーズ、ビートルズの音楽をバックに、リーダーのちっくんは恋と友情とバンドの将来に悩み、成長していく。似たような青春を送った(時代は違うが)私にとって、思わず頬が緩み、涙腺が熱くなりました。まったく背景は違うが、自らのバンドに悩むリーダー(マネージャー)像は映画コミットメンツにどこか通ずるものがあると思うのは私だけでしょうか?
Heart Beat
ゴツボ×リュウジさんの表紙に惹かれて買ったのですが、個人的に音楽ものが大好きなのもあり、中身は期待以上でした。
特に花村萬月は持ち前のエグい描写もあり、秀逸でした。
さらっと読むのに丁度いい感じです。
山桃寺まえみち (PHP文芸文庫)
女子大を休学して祖母の経営するスナックを引継いだヒロイン、ミラちゃんと客たちの交流をコミカルに描いた、短かめの長編。とにかく会話(と、ヒロインのぼやき)が物凄く楽しい。ただ、この楽しい世界も永遠の楽園ではない。かなり辛い展開などもあって、それでもラストが爽やかで感動的なのは、やはり主人公の魅力ゆえだろう。
雪のマズルカ (創元推理文庫)
寂寞とした/冬の朝は何も包みこまず何も隠さず~
そんな雰囲気の中にこの探偵はたたずんでいます。
夫とは死別した元保育士。学生時代はテニスをしていて、そして(良くあることですが)新聞は読みません。黒のカシミヤのコートも持っていますが、普段着は麻のジャケットにジーンズ。風邪を引いたらほうじ茶とタータンチェックのひざ掛けを愛用します。丁寧なコトバ遣いをするので、小学生か中学生くらいの女の子のお母さんに見えるかもしれません。
そんな一見ごくフツウの41歳の女性。
そんな探偵は、解決したとしても快哉を叫べない事件に引き寄せられ、癒しを受けることなく、また、古いビルの北向きの部屋に戻っていきます。バッグにはリボルバー/事務所の引き出しにはナイフとメリケンサック/自宅には4kgの鉄アレイ...
芦原すなおらしいユーモアもありますが、「ミミズクとオリーブ」のあの温かみとはかけ離れた世界の話です。